月別アーカイブ: 2015年2月

驚きと恐怖の人生(腎精)。

・「恐・驚は腎を傷る。」
恐がり過ぎると「気」が下がり、

驚き過ぎると「気」が乱れ、

共に「腎」を傷つけます。

 

 

東洋医学で「腎」の役割は、

泌尿器系の排泄機能だけ…ではありません。

 
生命エネルギーの根本「腎精と命門」を主る…

ものとされています。

 
「腎」には、生命力(エネルギー)が貯蔵されていて(「臓精」を主る。)

成長と老化、発育や生殖などに関与しています。

 

 

その為、腎が傷むと下半身の冷えや痛み、

排尿のトラブル、視力や聴力の低下、

体力や生殖機能の低下などの症状があらわれます。

 

 

よく恐ろしい思いをした時に、下半身に力が入らずに、

いわゆる「腰が抜ける」状態になったり、

ひどい時は「失禁」したりすることがあります。

 
恐怖で、腎の「気」が下がり、下にもれてしまう為です。

 

 

また、驚き過ぎると「気」が乱れ(気が動転する)、

パニックとなり正常な判断が出来なくなってしまいます。

 
その為、動悸や不眠、物忘れなどの症状があらわれます。

 

 

「恐」が過ぎると
・「気」が下がる。
「気が重い」、「気が沈む」などとも表現する。

 
「驚」が過ぎると
・「気」が乱れる。
「気が動転する」、頭から「血の気が引く」などとも表現する。

 
(エネルギー的には、重い感覚。
特に下部に偏る感じがある。何となく黒っぽい。)

 

 
・「腎を傷る」
腎の変調により、腎の気を貯蔵することが出来なくなり、

気を下降させてしまいます。
また、気が乱れることにより精神に混乱を生じさせます。

 

 

<症状>
・大小便の失禁
・白髪の増加
・下半身の冷え
・体力の低下
・生殖機能の低下
・動悸
・不眠
・物忘れ
・精神錯乱など
となります。

 

 

次回からは、「不内外因」について…です。

悲しみよこんにちは、はい(肺)さようなら。

・「悲・憂は肺を傷る」
悲しみが過ぎると「気」が消え、

憂いが過ぎると「気」は縮み、

ともに「肺」を傷つけます。

 
深い悲しみや憂いに長く囚われていると、

肺の気を消耗し「意気消沈」させて気力が無くなります。

 
また、「心(胸)が痛む」ことから、

咳、息切れ、ため息、胸苦しさなどの症状があらわれます。

 
「肺」には、「気を主る(つかさどる)」作用があり、

呼気・吸気の「呼吸の気」を以って、

「一身の気」の気機(気の働き)に関与しています。

 
つまり、各臓腑の「気」を呼吸によって

調節する役割を担っているのです。
その為、深い悲しみや憂いは

「生きる(息をする)気力」を奪うことになります。

 

 

そして、「肺」は呼吸を通して鼻や皮毛と関連する臓器で、
五臓六腑の中で「外邪」の影響を真っ先に受けます。

 
その為、「悲」や「憂」によって「肺」のバリアが傷られると
「外邪」の侵入を許しやすくなります。

 
また、「肺」は「脾」によって運ばれた水(津)液を

全身に巡らせる働きがありますが、

憂いが過ぎるとそれを妨げます。

 

 

「悲」が過ぎると
・「気」が消える(不足する)

 
「憂」が過ぎると
・「気」が縮む(気を揉む)

 
(エネルギー的には、小さく軽く、希薄な感じ。

時に、ひんやりと感じる。)

 
※気が不足することを「けがれ」(気枯れ)と呼びます。

 

 

・「肺」を傷つける。
肺の変調は気と津液の巡りを妨げるようになり、

やがて脾も傷つけます。

 

 

<症状>
・咳
・息切れ
・ため息
・胸悶感
(胸苦しさ)など
となります。

 

 

次回は、「恐」・「驚」について…です。

思い煩ひ(脾)

・「思は脾を傷る」
「思」が過ぎると、「気」は停滞し、

「脾(ひ)」を傷つけます。

 
思とは、思慮、思考のことです。
思慮、思考することは人間として

正常な精神活動なのですが、
「考え過ぎる」と病気の原因となります。

 
「脾」には、「運化作用」といって食べた物を

消化吸収し、そして運搬する働きがあります。

 
そして、もう一つ「統血作用」という

血液が血管から漏れないようにする働きもあります。

 
漢方的な「脾」は、

いわゆる西洋医学で言われるところの「脾臓」とは違います。

 

 

 

あれやこれやと思いを巡らせ、
いつ迄もクヨクヨ考え過ぎると

気が滞り、脾に影響を与えます。

 
脾の運化作用が弱まり、

食欲不振やお腹が張るといった症状があらわれます。
ひどくなると、胃下垂や子宮脱、脱肛になったりします。

 
また、女性の場合は「思い煩ひ」から脾の統血作用が低下し、

不正性器出血を起こすことがあります。

 

 

「思」が過ぎると

 
・「気」が結ぶ(うっ滞する)
気がかたまる(気がふさぐ)とも言う。
(エネルギー的に動きの無い、滞った(塊りがある)感じになる。)
※割り切る、思い切る、開き直る…などの言葉通り、

エネルギーを切って開いて動かす。

 
・「脾(ひ)」を傷つける
脾の持つ「運化作用」、「統血作用」が弱まり、

消化吸収を損なう。

 

 

<症状>
・腹痛
・食欲不振
・膨満感
・軟便
・胃下垂
・不正性器出血など
となります。

 

 

次回は、「悲」・「憂」について…です。

怒ったら、あかん(肝)。

・「怒は肝を傷る」
怒り過ぎると「気」は上がり、

「肝」を傷つけます。

 
ご存知の通り、

肝臓は血液を貯蔵する働きが有るのですが、

漢方的にはそれだけでは無く、

自律神経のバランスを整える働きも

担っている臓腑とされています。

 
「肝は疏泄(そせつ)を司る」と言い、

胃腸を始めとした五臓全体の維持や

感情調整、血液保存などの大切な役割があります。

 
しかし、七情の中の一つである「怒」が、

「肝」を傷ると

肝の持つ「気」の疏泄機能に変動が生じ、

「気」が「血」を伴って

頭に上昇したまま下がらなくなります。

 
怒りの表現でよく「腹が立つ」と言いますが、

この「立つ」は立ち上がる≒上昇する…

を意味します。

 
そして上昇した「気」は、「頭にくる」のです。
「気」が「血」を伴うと、

「頭に血がのぼる」状態となり、

脳卒中などを誘発することもあります。

 
さらに進行すると「心」に影響を与え、

不眠や動悸などの症状があらわれたりします。
(「怒り心頭に発す」と言います。)
※怒り新党では、ありません。

 

 

「怒」が過ぎると…

 
・「気」は上がる。
(「怒髪天を衝く」ように、突き上げてくる感じや、

「頭から湯気が出る」ような、ゆらゆらとしたものを観じる。)

 
・「肝」を傷る。
肝のもつ「気」の疏泄機能に影響し、

気が血を伴って頭に上昇したままになる。

 
<症状>
・頭痛
・めまい
・目の充血
・脳卒中
・動悸
・不眠など
となります。

 

 

次回は、「思」について…です。

喜び過ぎて「心」痛める。

七つの感情(七情)は、臓腑を傷つけますが、

なかでも心、肝、脾の臓器に

影響を与えやすいと言われています。

 
とりわけ、「心」は五臓六腑の中心であり、

精神の変化はまず心の機能に影響を及ぼし、

各臓腑に波及していくとされています。

 

 

七情のうちから、先ずは「喜」について…です。

 
「素問」陰陽応象大論篇には、「喜は心を傷る」とあります。

 

 

喜び過ぎると「気がゆるみ、心を傷つける。」というわけです。

 
七情のなかでも他の感情、例えば「怒」や「悲」などは、

内臓の働きに影響を及ぼすと言われても

何となく納得出来るのですが、

「喜」=喜びの何が良くないというのでしょうか?

 
内因でいう「喜」とは、過度の喜び…のことです。

 
宝くじで3億円が当たって、狂喜乱舞のあまり心臓発作で倒れたとか、

喜び過ぎて精神が興奮して夜眠れなくなった…などの「喜び」です。

 
「心」には、五神(神気)のうちの最上位にあたる「神」が宿り、

心拍動や呼吸、知覚や精神活動、

手足や顔の表情などを正しく行わせるといった

生命活動維持を支配する働きがあるとされています。

 
※五神については、また別の機会に説明します。

 

 

つまり、東洋医学的な「心」とは、

心臓そのもの働きだけで無く、

自律神経機能や間脳、視床下部を含めた

「視床」の働きも合わせて指したもの…と考えられます。

 

 

そのことを念頭において

 

 

「喜」が過ぎると…

 
・「気」はゆるむ。
(口元が緩む。笑顔が弾ける。喜びが溢れる…のように

エネルギー的には、拡張傾向でふわふわとした感覚。)

 
・「心」を傷つける。
心の持つ「神」の働きが衰え、

不眠や不安など、精神活動に影響を与える。

 
<症状>
・集中力の低下
・不眠症
・不安神経症
・精神錯乱など
となります。

 

 

次回は、「怒」について…です。

内因(七つの感情)

東洋医学で病気の原因のひとつに、

「内因」があります。

 
内因は身体の内側から起こり、

臓腑を痛める原因要素を言います。

 
人間には「喜」、「怒」、「思」、「悲」、「憂」、「恐」、「驚」の

七つの感情(七情)があるとされています。

 

 

この感情の過度な変化が病気を引き起こす原因=「内因」です。

 
喜んだり、驚いたり、怒ったりという感情は、

誰にでもある当たり前の正常な反応なのですが、

それが行き過ぎると時に自らの身体に悪影響を及ぼします。

 
また、長期間にわたり悲しみが続くといった変化も、

五臓六腑や気・血・津液に影響を与え、

バランスを崩す要因となり得ます。

 
内因による病は、身体の内部から発生し、緩慢に進行し、

「陰性」の症状をあらわすことが多くあります。

 
さらに虚に乗じて外邪が侵入すると、

発熱・疼痛・喘咳などの「陽性」の症状をあらわすこともあります。

 
また、それぞれの感情(七情)は、

それぞれの気と臓腑に関わっています。

 
過度の情志(情緒)の変化は、

それぞれ関連する臓腑気血に影響を及ぼします。

 
逆に臓腑気血の機能失調が、

それぞれの情志に影響を与えます。

 
つまり、感情の持ちようで臓腑を傷つけることがあると同時に、

臓腑の状態によってその人の気分(情緒)が左右され得る…

というわけです。

 

あの人の機嫌も内臓しだい⁈かもしれません。

 
七情(喜・怒・思・悲・憂・恐・驚)と、

それぞれの臓腑気血の関連性については、

次回から順を追って書いていきます。

風邪は万病のもと

昔から、「風邪は万病のもと」とよく言われますが、

それは病気は風によって運ばれ、

「風邪」が年間を通してあらわれる外邪である…

と同時にほかの病邪(六淫)を伴って

あらわれることが多いからです。

 
例えば、「風邪」で起こりやすい鼻水、鼻づまりの症状と、

「寒邪」による吐き気の症状が同時に見られることがよくありますが、

それは邪気が重なって起きているからです。

 
この場合、2つを合わせて「風寒」のかぜと言います。

 

夏は高温多湿の気候のため、湿熱が発生しやすく

梅雨時は「風邪」、「寒邪」、「湿邪」の

3つの病邪が重なる場合もあります。

 

 
・寒邪…冬場や気温が低い時期に多い病邪。

皮膚や呼吸器官などから侵入し「陽気」を衰えさせるため、

寒気や手足の冷えといった症状が起きる。
脾や胃に寒邪が入ると、下痢や吐き気などの症状が見られる。

 
<症状>
・寒気
・吐き気
・下痢
・腹痛
・手足の冷え
・頭痛
・関節の痛みなど。

 
その他の「暑邪」、「湿邪」、「燥邪」、「火邪」については

その時々にご紹介していきたいと思います。

 
次回は、「内因」について…です。

風邪(ふうじゃ)

六邪(六淫)のうち、

風邪(ふうじゃ)は一年中あらわれやすい外邪ですが、

特に春先に多い…とされています。

 
軽く高く舞う「風」の性質が人間の身体にも投影され、

顔面などの人体の上部に症状が現れます。

 
また「風」の性質として、急に吹き始めて

強くなったり弱まったり、また止んだり。
或いは、突然風向きが変わったり…と一定しません。

 
それと同様に、証(しょう)としては急速に発症し、

悪化したり落ち着いたりし、また患部も一定せず移動します。

 
身体のふらつきや眩暈(めまい)も風邪の特徴です。

 
主な症状としては、

 
・頭痛
・鼻づまり
・のどの痛み
・まぶたのむくみ
・めまい

 
などが挙げられます。

 

昨日まで何とも無かったのに、朝起きたら頭痛がして、

急に寒気がしたと思ったら熱が出て、

ちょっと良くなったかと思ったら、今度はのどが痛くなって…。

 
もう大丈夫と安心しても、次の日の朝、めまいで起きれない。
なんて感じです。

 
昔から、「風邪は万病のもと」と言われたりしますが、

風邪以外にも「通風」、「中風」、「風疹」、「破傷風」など

病気には「風」が付く名前が結構あります。

 
古来中国では、病気は「風」が運んで来る…と考えられ、

病気のことを「風病」とも称していました。

 
「風水術」なども、「風と人間」との

より良い関係性を探求した術だと言えます。

外因(自然界の気候変化)

立春が過ぎて一週間。
今週に入って、月曜、火曜と小雪まじりの冷たい一日だったのが、

昨日、今日と暖かくなったかと思っていたら、

今晩から雨模様で

週末はまた寒波が押し寄せてくるという予報が…。

 
めまぐるしく変化する気候に、

なかなか身体の方がついて来れない状態です。

 
東洋医学では、病気の原因のひとつに

この「気候の変化=外因」をあげています。

 
自然界の6種類の気候変化である六気が異常をきたすと

六邪(六淫)となり、病気の原因となるとされ、

「外感病邪」とも言われます。

 
六気は、「風」・「寒」・「暑」・「湿」・「燥」・「火」として現れます。

 
「風」は、気温の変化によって起こる空気対流から派生する風。

 
「寒」は、寒さ。

 
「暑」は、暑さ。

 
「湿」は、湿気。

 
「燥」は、乾燥。

 
「火」は、熱の強い状態で季節性はありません。

 
六気の季節変化は人間にとってもまた、

万物を育む上でも欠かせないものですが、

その六気に過不足が生じたり、

時期に反して出現した場合、

身体に悪影響を与える六邪(六淫)へと転化します。

 
六邪は口、鼻、皮膚から体内に侵入します。

 
この時、正気が強く、

外邪を排除(邪気払い)することが出来れば、

病気には為らないのですが、

外邪の方が正気に勝ると発病してしまいます。

 
次回は、この時期に多い「寒邪」と「風邪」について…です。

病気の原因を知る

前回、節分の邪気払いのお話をしましたが、

東洋医学(漢方)で言うところの「邪気」とは、

どのようなものを指すのでしょうか?

 
東洋医学では、

その人が健康であるかどうかを診るのに、

 
①陰陽

 
②五臓六腑と経絡

 
③気・血・津液(しんえき)

 
という三つの要素を指標としています。

 
つまり健康体とは、
「陰陽のバランスが保たれ、

身体を構成する気・血・津液の量が充分で、かつ淀みなく循環し、

五臓六腑が協調的に働いている状態。」を指します。

 
そして、これらの三つの要素のバランスが崩れて、

身体の抵抗力である正気(せいき)が弱まった状態を

「病気」になる…と言います。

 
また、病気が発生する原因=病因を「邪気」と見なします。

 
東洋医学では、陰陽のバランスが崩れて病気につながる、

その原因として大きく三つに分けて考えられています。

 
⑴外因

 
⑵内因

 
⑶不内外因

 
逆に言えば、これらの病因を特定し排除すること(邪気払い)が、

治療の基礎、基本となります。

 

三つの要因の内、

先ず外因とは、身体の外側から押し寄せる病邪のことで、

外邪とも呼ばれます。

 
次に内因は、身体の内側から起こり、

臓腑を痛める要素を言います。

 
そして不内外因は、外因にも内因にも分類されないもので、

主に生活習慣のことを指します。

 
以上、三つの病因について次回から

ちょっとだけ詳しく書いていきたいと思います。
※難しく書いても面白くありませんから…。