月別アーカイブ: 2015年3月

労逸(働き方の問題)

前回は、不内外因(生活習慣)の内、

飲食不節(食べ方の問題)について書きましたが、

あと一つ大きな要因として、「労逸」が挙げられます。

 
「労逸」とは、

過労を表す「労倦」と、安静を表す「安逸」を組み合わせた言葉で、

働き方の節度を示すものです。

 
働き過ぎはもちろんのこと、

働かなさ過ぎ(休み過ぎ)もまた、

心身に負担が掛かり、病気の原因となる…というわけです。

 
「労逸」には、次の4つがあります。

 
・労力過度
仕事や勉強、はたまた遊びなどが過剰で「過ぎる」と、

気血を消耗し「心身」ともに疲労する。

 
・心労過度
考え、悩み過ぎることで精神的疲労になること。
「脾」と「心」の失調により、
動悸や食欲不振などを引き起こす。

 
・房事過度
性生活の過度による疲労。
「腎精」を消耗し、

腰痛や膝痛、耳鳴り、無月経などの症状が表れる。

 
・安逸過度
休み過ぎの怠惰な生活は気血を停滞させる。
「脾・胃」の働きが衰え、

やる気や食欲が湧かなくなる。

 

 

つまり、我々人間は、仕事にしろ、遊びにしろ、

また休むときも、悩むときも、性生活を営むうえでも、

「過ぎたるは猶及ばざるが如し。」で、何事も「過ぎる」と、

それは病気の原因=邪になってしまう…というわけです。

 
自分自身でコントロール出来る部分も、出来ない部分も、

また好むと好まざるとにかかわらず、

何事もほどほどに、

こちらも「腹八分目」が肝要なことは、

間違いありません。

飲食失節(食べ方の問題)

食生活の乱れは、

「不内外因」のなかでも特に、「病因」となりやすく、

飲食の節度が無くなった状態を「飲食失節」と呼びます。

 
飲食失節には、大きく分けて次の3つが有ります。

 
・飢飽失常…食べ過ぎや、食が細過ぎる状態を指す。
・飲食不潔…読んで字の如く、不衛生なものを食べること。
・偏食…刺激物や味、性質の似通った食材を食べ続けること。

 

 

つまり、飲食の「質」と「量」の適、不適の問題です。

 

 

まず、「量」が少なすぎる「小食」は、

栄養が足りず(栄養失調)、

「気」・「血」・「津液」の不足や、

身体の抵抗力(正気)の低下を招きます。

 

 

 

また、「量」が多すぎる「大食・過食」は、
脾胃などの臓腑に負担がかかり、

気・血・津液の流れが滞ったうえに、

下痢や便秘などの消化不良を引き起こします。

 
「質」の偏り=偏食では、
・冷たいもの、甘いもの
消化機能の低下による下痢や腹痛。
身体を冷やす。

 
・油っぽいもの、味の濃いもの
消化不良による下痢や腹痛。

 

 

・辛いもの、熱いもの
乾燥や便秘を招く。

 

 

栄養に気をつけ、規則正しくきっちりと食べること、

過不足や好き嫌い無く食べること…。

 
「正しい食生活」は、健康な身体を維持する上での

基本中の基本…であることは、誰もが認める

「あたりまえ」の事柄ですが、いざ実行しようとすると、

なかなか大変な作業ではあります。

 

夜型となった現代人にとっては、決められた時間に

きちんと食事をすること自体が難しくなっています。

 
外食も多く、どうしても味の濃いものや

油っぽいものを摂りがちです。

 
また、巷にグルメ情報も氾濫し、ついつい乗せらて

食欲中枢が刺激されてしまいがちです。

 

 

また、ストレスによる「どか食い」や「深酒」、

無理なダイエットなどによる偏った食事パターン…など

「あたりまえ」な食生活とは、ほど遠いものとなりがちです。

 
食べることは、自らが「生きる」為に、

他の「いのち」を感謝して「いただく」こと。

 
この原点に立ち返って、

まずは「腹八分目」を心がけてみましょう。

不内外因(生活習慣病)

東洋医学で言うところの「邪」
すなわち病気の原因の内、

 

 

・七つの感情(七情)の過度な変化が引き起こす「内因」。

 
・自然界の異常な気候変化(六邪、六淫)が引き起こす「外因」。

 
について説明しましたが、

それ以外にも内因にも外因にも属さない「病因」があります。

 
それを「不内外因」と呼びます。

 
「そのまんまじゃん!」と思わず声に出してしまいそうになりますが、

本当にそのままです。

 
では、その「不内外因」とは具体的に、

どのような事柄をさすのでしょうか。

 
それは、タイトルにも挙げたように「生活習慣」、

即ち毎日の日常生活を営む中で発生する
「病因」のことを指します。

 
主なものに、
・飲食失節
・労逸
・五労
・体質
・外傷
などがあります。

 
「飲食失節」とは、食べたり飲んだりといった行為に

節度が無くなった状態を言います。

 
「労逸」とは、過労を表す「労倦(ろうけん)」と、

安静を表す「安逸(あんいつ)」を組み合わせた言葉で、

労働の節度を示しています。

 
また、上記以外にも種類が多く、

多産や無産、高齢出産、若年出産、

過度の飲酒、食中毒、体質に合わない薬やサプリメント、

事故などが挙げられます。

 
どれもある程度、自分自身で

コントロール可能なものが多い…とも言えます。

 
しかし近年では、昔では想像も出来無かったであろう

様々な事象も挙げられるようになっています。

 
例えば、「放射線」や

パソコンやスマートフォンなど…の「電磁波」。

 
また、食品に含まれる「添加物」、「農薬」。

 
大気中の「汚染物質」や、その他の「化学物質」など。

 
数え上げれば、キリがありません。

 
その辺のところは、一先ず置いておくとして

(本当は大変な問題ではあるのですが…。)、

漢方的には「不内外因」の中でも、

特に病気の原因となりやすいとされている

食生活の乱れ=「飲食失節」について

説明していきたいと思います。

 
※次回に続く。